「神曲」(著: 川村元気)の感想
こんにちは!おいしょーです。
今回は「世界から猫が消えたなら」の著者:川村元気先生の最新作で、「神曲」を紹介します。
※ 以下ネタバレを含みます!
価格:1,705円 |
<目次>
1.こんな人におすすめ!
・自身の宗教について気になる
・家族のことが気になる
・身近に大切な人がいる
・結婚を考えている
2.あらすじ
本作は、大阪の町で暮らす檀野家の「家族の絆」や「信じることの難しさ」をテーマにした作品である
冒頭では、ある朝学校へ父(三知男)が長男(奏汰)を送った直後に、奏汰を目の前で通り魔に殺されるところからスタート
小説は「檀野三知男」、「檀野響子」、「檀野花音」の3部で構成され、それぞれの登場人物の視点で物語が進行
第1部
三知男は奏汰を失った悲しみを抱きながらも妻と娘のためにできることを考え、「永遠の声」を疑いながらも妻と娘の為に入会する
第2部
響子は息子を守れなかった父三知男に失望し、運命的に出会った合唱団「永遠の声」という名の宗教団体と出会い、超越した物事を体現し、その中で失った奏汰の影を追う
第3部
花音もまた、なぜ殺されたのが自分ではなく奏汰だったのか、孤独な母を守りたいと願い苦慮していた。同時に母を裏切らないように自分の意見や感情を押し殺す花音。
母響子とともに永遠の声で活動する中、彼女の前に現れたのは自分とは真逆で、あらゆる物事に疑問を投げかけ、積極性、探求心、行動力を兼ね備えた入江隼太郎だった。
そんな入江は花音を、鳥かごのような狭い世界から、外の広い世界を見せようと連れ出そうとする。
母響子は入江の事を嫌っていた。娘に偽りを吹き込み、永遠様から遠ざけようとする悪魔とも警戒する。
花音は自分を変える為、家族を救う為、隼太郎は必要な存在であり、彼と行動をともにする。
ある日永遠の声内部で起こった事件を目撃してしまった花音は組織の黒幕に命を狙われる。「奏汰の死」後、永遠の声で偽りの幸せにすがった檀野家が、この新たな危機を団結して乗り越え、神様が身近にいることに気づき、家族の絆を深めていく物語である。
3.相関図
4.それでも愛する者を信じたい
本作で一番人間味を示す父三知男ですが、妻響子に翻弄されつつも、彼は彼女がいつか正気になって戻ってくることを信じていました。
最後は娘を助けるために響子が犯人を刺してしまいますが、
妻を守るために、自分が刺したと嘘をつき、三知男は刑務所に入ります。
妻響子は家族3人が永遠様とともに神聖家族になることを目指しましたが、最後には偽りの神様よりも大切な娘の命を守ることを選択しました。
娘花音は、家族や自分を翻弄する「神様」を嫌いつつも、神様に助けを求めていました。良くも悪くも神様の存在を信じようとしています。
ところで
- あなたに大切な人はいますか?
- 信じているものはありますか?
- もし裏切られたらどうしますか?
私はカトリックで、幼少期、辛い時はよく聖堂で神様に助けを求めてひたむきに祈り続けました。いくら願っても応えてくれない神様に何度も失望しました。今では神様は恥ずかしがり屋なので直接語りかけてはきませんが、人を通して導く者と考えてます。
何かに裏切られ失意に落ちたことは誰しも経験はあると思います。人間は自分本位な生き物に設計されていますから、見返りを求め、自分にとって都合の良いことしか記憶に残りません。
だからこそお互いに協力していかないと、簡単に亀裂が生まれ、時間とともにその溝はどんどん広がります。
ならばと何にも頼らず、一人で生きていくことを選択する者もいるでしょう。
裏切られるのが怖くて人との距離を上手にとることを覚えていく。
でも孤独のままは嫌ですよね?やっぱり誰かに認められたい。何かにすがりたい。
今身近で愛する者がいるならば、その人を大切にしてください。
どんなになっても信じ続けなければ、何も残らなくなってしまいます。
本当の幸せに至るまで、今日も信じたい者を信じましょう。
人の弱みにつけこむ悪と戦いながら。
そう感じた本作でした。
良かったら是非読んでみてください。
価格:1,705円 |